YouTube 推奨のエンコード仕様概要
YouTubeは、アップロードされた動画を自前で再エンコードします。元の動画の画質が高いほど、再エンコード後の画質も良くなります。
一般的な推奨仕様は次のとおりです。
- コンテナ: MP4
- 映像コーデック: H.264(互換性最高)、H.265、VP9
- 音声コーデック: AAC-LC(ビットレートはステレオで384kbps)
- ピクセルフォーマット: yuv420p(YUV 4:2:0)
- フレームレート: 元の素材と同じ(23.976、24、25、29.97、30、48、50、59.94、60fps)
H.264(libx264)— 最も互換性の高い設定
1080p(FHD)標準設定
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libx264 -b:v 8M -maxrate 10M -bufsize 20M -pix_fmt yuv420p -c:a aac -b:a 384k output.mp4
2-pass エンコード(安定したビットレート制御)
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libx264 -b:v 8M -maxrate 10M -bufsize 20M -pix_fmt yuv420p -pass 1 -an -f null /dev/null
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libx264 -b:v 8M -maxrate 10M -bufsize 20M -pix_fmt yuv420p -pass 2 -c:a aac -b:a 384k output.mp4
2-passは、1回目で映像を分析し、2回目でその結果を使って書き出します。ビットレートが狙いどおりになりやすく、長い動画で特に効果があります。
CRF(品質固定)モード — アップロード素材向け
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libx264 -crf 18 -preset slow -pix_fmt yuv420p -c:a aac -b:a 384k output.mp4
-crf は、画質を一定に保つモードです。値を小さくするほど高画質になり、ファイルは大きくなります。
| CRF値 | 品質 | 用途 |
|---|---|---|
| 15〜18 | 高品質 | マスター素材、アップロード用 |
| 19〜23 | 良好(デフォルト付近) | 一般的な用途 |
| 24〜28 | ファイルサイズ重視 | プレビュー、配信 |
実測:推奨ビットレート・CRF・VP9 を比べる
YouTubeは、アップロードされた動画を必ず再エンコードします。手元で書き出すファイルは「YouTubeに渡す素材」で、視聴者が見る映像そのものではありません。そこで、どの設定で書き出すのが得かを測りました。
測定環境: Intel Core i9-14900KF / RTX 4090 / FFmpeg 8.1 / 素材 Big Buck Bunny 1920x1080 30fps 10秒 H.264 24.6Mbps 29.3MB(© Blender Foundation, CC BY 3.0)/ 2026-08-28 測定
VMAFは、元の映像にどれだけ近いかを表す画質のスコアです。高いほど元の映像に近くなります。
| 設定 | サイズ | VMAF | エンコード時間 |
|---|---|---|---|
YouTube 推奨 8 Mbps(-b:v 8000k -preset slow) |
9.32 MB | 94.24 | 3.87 秒 |
| CRF 18 / slow | 15.48 MB | 96.12 | 4.67 秒 |
| CRF 20 / slow | 11.34 MB | 95.24 | 4.20 秒 |
| CRF 23 / slow | 7.14 MB | 93.49 | 3.46 秒 |
| 16 Mbps(推奨の2倍) | 18.90 MB | 96.44 | 5.27 秒 |
| VP9 CRF 31 | 6.52 MB | 93.94 | 66.08 秒 |
ビットレートを2倍にしても、画質はあまり上がりません。8 Mbps(VMAF 94.24)から16 Mbps(96.44)にすると、VMAFは2.2ポイント上がるだけで、ファイルは9.32MBから18.90MBに倍増します。「推奨より高めに上げれば画質が残る」とよく言われますが、増えるアップロード時間に見合う差ではありません。どうしても画質を上げたいなら、ビットレートを2倍にするより、CRF 20前後(11.34MB / VMAF 95.24)で書き出す方が効率的です。
VP9はファイルが小さい代わりに、エンコードに17倍の時間がかかります。VP9 CRF 31は6.52MB・VMAF 93.94で、8 MbpsのH.264(9.32MB / 94.24)より30%小さく、画質はほぼ同じです。ただしエンコードに66秒かかりました(H.264は3.87秒)。どうせYouTubeで再エンコードされるので、この待ち時間に見合うのは、アップロード回線がとても遅い場合だけです。
CRF 20前後が扱いやすい設定です。-b:v 8000k は、動画全体の平均を8 Mbpsに合わせる指定(平均ビットレート)で、ビットレートが一定になるわけではありません。CRFは、画質が一定になるようにデータを配分します。この素材では、CRF 20(11.34MB / VMAF 95.24)は、8 Mbps指定(9.32MB / 94.24)よりファイルが約2割大きく、VMAFは1ポイント高くなりました。
素材はアニメーションです。実写、特に手持ち撮影やノイズの多い映像では、同じCRFでもファイルは大きくなります。
解像度別の推奨ビットレート設定
720p(HD)
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libx264 -b:v 5M -maxrate 6M -bufsize 12M -pix_fmt yuv420p -vf "scale=1280:720" -c:a aac -b:a 384k output_720p.mp4
1080p(FHD)
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libx264 -b:v 8M -maxrate 10M -bufsize 20M -pix_fmt yuv420p -vf "scale=1920:1080" -c:a aac -b:a 384k output_1080p.mp4
4K(UHD)
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libx264 -b:v 35M -maxrate 40M -bufsize 80M -pix_fmt yuv420p -vf "scale=3840:2160" -c:a aac -b:a 384k output_4k.mp4
H.265(HEVC / libx265)— ファイルサイズ削減
同じ画質(VMAF)で比べると、ファイルはH.264より26〜35%小さくなりました(実測)。
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libx265 -b:v 4M -maxrate 5M -bufsize 10M -pix_fmt yuv420p -c:a aac -b:a 384k output_h265.mp4
H.265 CRFモード
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libx265 -crf 20 -preset slow -pix_fmt yuv420p -c:a aac -b:a 384k output_h265.mp4
libx265のCRFの既定値は28です。CRF 20〜24は、既定より画質を優先した設定です。
VP9 — オープンソースコーデック
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libvpx-vp9 -b:v 0 -crf 30 -pix_fmt yuv420p -c:a libopus -b:a 256k output.webm
VP9でCRFを使うときは、-b:v 0 も一緒に指定します。
VP9 2-pass(安定したビットレート)
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libvpx-vp9 -b:v 8M -pass 1 -an -f null /dev/null
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libvpx-vp9 -b:v 8M -pass 2 -pix_fmt yuv420p -c:a libopus -b:a 256k output.webm
フレームレートの固定
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libx264 -b:v 8M -maxrate 10M -bufsize 20M -pix_fmt yuv420p -r 30 -c:a aac -b:a 384k output.mp4
-r 30 で30fpsに固定します。可変フレームレート(VFR:場面によってフレームレートが変わる動画)を固定にするときにも使えます。YouTubeのヘルプは、録画したときと同じフレームレートでアップロードするよう勧めているので、30 は元の動画に合わせてください。
音声設定
AAC-LC 384kbps(ステレオの推奨値)
ffmpeg -i input.mp4 -c:v copy -c:a aac -b:a 384k output.mp4
ステレオを確認・変換
ffmpeg -i input.mp4 -c:v copy -c:a aac -ac 2 -b:a 384k output.mp4
-ac 2 で、音声をステレオ(2チャンネル)にそろえます。
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よくある質問
YouTube が推奨するビットレートはいくつ?
1080p・30fpsなら8 Mbps、1080p・60fpsなら12 Mbpsが公式の推奨値です。「推奨より高めに上げれば画質が残る」と言われますが、8 Mbpsから16 Mbpsに倍増しても、VMAFは94.24から96.44へ2.2ポイントしか上がりませんでした(測定結果)。ファイルサイズとアップロード時間は倍になるので、割に合いません。画質を上げたいなら、ビットレートの指定を増やすより、CRF 20前後で書き出す方が効率的です。
1080p で撮ったのに 4K にアップしたら良くなる?
1080pの素材を4Kにしても、4Kの細かさは出ません。書き出しは、手元の素材の最高解像度で行ってください。
2 パスエンコードとCRFどちらが良い?
CRF 17〜18と -preset slow の組み合わせで、ほぼマスター並みの画質になり、設定も簡単です。2パスが役に立つのは、出力サイズを正確に決めたいときだけです。
アップロード後に画質がぼやける
YouTubeのVP9/AV1エンコードには、ビットレートの上限があります。また、1080pや4Kの処理には時間がかかり、アップロード後の数時間は高い画質を選べないことがあります(YouTube ヘルプ)。YouTube側のAV1変換が終わると改善することもあります。
HDR でアップロードすべき?
HDRで撮影・色調整(グレーディング)した素材で、BT.2020とPQ/HLGが正しくタグ付けされているときだけ意味があります。設定が不完全なHDRファイルは、SDRに変換されたときに画質が落ちることがあります。